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信長は手を打って笑った。 「ほほう、そりゃ面白い。俺はそなたを見くびっておったようだ」 「いいえ。それは違います。私は織田家と斎藤家の和のために嫁ぐつもりでしたから、父がそのようなつもりでいるなら、この刃は父に向くと申しました。すると、父は笑って強く頷きました。父は私が父の考えを正しく理解しているか、私を試して、わざと婿殿を殺して織田家を奪えと言ったのです。父は織田家と戦する気はありません。織田家の財力は侮れないことは承知しています。織田家と小競り合いしてきた過去にも、一度も織田家を滅ぼせるとは思ったことはないでしょう」 「なるほど」 濃姫はその懐刀を信長に差し出した。 「まあ、そなたの父上の御意は津島の堀田を通して筒抜けだがな」 それからである。信長はよく濃姫をあちこちに連れ出すようになった。意足軒なる怪し気な者や、徒党を組んでいた不良の小姓たちと一緒に。 常識人の濃姫には、城の外に連れ出されるなど、信じられなかったが、実際繰り出してみれば楽しいもので、いつしか心から遊ぶようにもなっていた。 信長は本当に、あちこち連れ回した。
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