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だから、織田弾正忠家とは存亡をかけてまで戦おうとは思わないし、勝つとも思っていない。道三の父はもとは意足軒のような者、道理をわかっている。 それに、追放した守護の土岐氏の残党もおり、急に成り上がった道三には国内にさえ敵が多く、統治に難航していた。 織田家とは戦うより、仲良く付き合う方が互いに得策だ。だから、濃姫は嫁がされたのだ。 ともかく、それほどの財産が織田家にはあるのである。商人からの銭によって。 ところで、信長は富を手にしていることで傲慢になっているのか、高貴な人さえ下に見ているようなところがある。自分以外の人間は、貴人も賎民も関係なく、皆自分より下という態度がありありと出ている。 そのくせ、農民とは友なのだ。内心、農民をどう思っているのか知れたものではない。 むしろ、心からの彼らの友は、濃姫の方であったかもしれない。 ここの村人は皆ひどく穏やかだ。欲というものが欠片もない。 他人に優しく、他人のために何かしている。他人が喜び、ありがとうと言うことに、喜びを感じている。
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