寿々

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一方で、御所様は長満に妻子があり、寿々が進藤家の人間となっている事実に気が付いた。最近になって、ようやくだけれども――。 それを知った時、塩川家の配慮には感謝した。同時に、長満の妻子たちに申し訳ないとも思ったのではあった。 「証になぞ、滅相もない!」 御所様は長満に強く訴えた。目が潤んでいる。 「長年、実の父娘であることを秘してこられたのです。これではあまりにも、寿々姫がお気の毒です。ですから、もう私へのお気兼ねはなく、父娘の名乗りをして下さい。寿々姫の素性を明かしてあげて下さい。だからといって、上様への忠義の証などと……寿々姫を織田家への人質だなんて、そのようなお考えはおよし遊ばして!」 「しかし、父娘であることを明らかにすれば、織田家の中にいる寿々には、人質という意味合いも出てきます。御身もそれはおわかりのはず。それにしても――」 長満は遠くを見つめ、嘆息した。 「何故今まで父娘であることを黙っていたかと、上様には怪しまれましょうな。かといって、御身の素性は明かせませぬが」
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