2章:惑い

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「急ぐ必要はない」  デイルはそう言うと、どかっと腰を下ろした。 「デイル様?!」  狼狽える隊の者らを一瞥し、デイルは告げる。 「こんな馬鹿げた競い合いはおかしいと思わないのか? 大国の精鋭が血眼になって、か弱き女を奪いに行くなど、恥ずかしくてかなわん」 「何をお言いです? 最初にデイル様が森を抜けた者が勝者だと宣言したのではないですか! 国の威信がかかった戦いです!」  側近は目を見開いてデイルに応じる。そうである、この競い合いの最初の発信者はデイルなのだ。 「ほお、キールは女を拐うことが国の威信になると言うのだな?」  側近キールは肩を怒らせる。隊の者らは、そんな二人をおろおろと見るばかりだ。 「そんなことを言っている場合ですか?! 最下位のこの状況です。このままでは弱小国だと宣言するようなもの。腑抜けだと他国に笑われますぞ」  キールは苛立ちながら発した。 .
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