2章:惑い

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「お前たちとてわかっているのだろ? いいか、この競い合いに勝敗などない。参加していることがすでに敗しているんだ。国の威信どころか、誇りさえない! 女を拐って、勝利に酔いしれるなど!」  デイルはそう吐き捨てた。 「ですが! デイル様、せめて森をいち早く抜けることはさせてください。それさえも目指さねば、最初の宣言にも……この歌声に応えられないでしょう」  キールはそう放った。  デイルは瞳を閉じて歌声を聴いている。 「……ああ、そうだな」  デイルは目を開く。 「行くぞ。あの歌声にせめて応えようか」  キールら精鋭隊は頷いた。デイルを先頭に走り出す。惑わずに来い、そう歌声は放っている。デイルは唇を噛み締めながら走る。自らの発信がクツナ国を陥れた。その事実は変わらない。 『そうだ、せめてこの競い合いの行く末を見届けることが俺に出来ること』  デイルは一心に走り続けた。 .
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