2章:惑い

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 森を抜けるには丸一日はかかるだろう。  夜営を組んだ精鋭隊から煙が上がる。森から上がるいくつもの煙をサラは確認した。さえずりがゆっくりと消える。  日中歌い続けた喉は焼けるように熱くなっている。サラはコップに水を注ぎ、コクンと一飲みした。  森の中に灯りが灯った。七つの灯りは、籠の塔からまだ離れた位置だ。サラは夜空を見上げた。月明かりがほのかに籠を照らす。  籠の塔はまだ暗い。すでにサラしかいない塔に灯りを用意する者はいない。  サラは月明かりの籠の中で水を飲み干した。そして、テーブルに置いてある本を抱きしめる。 「明日、私は誰に拐われるのかしら?」  サラは籠の中を眺める。 「ふふっ、この籠から拐うのだから、私は放たれるの? ……ううん、違う籠に移るだけかしら」  呟きが闇に溶ける。  サラはパラパラと本をめくった。薄暗い中で、挿し絵の青い薔薇だけがサラの目を惹き付けた。 .
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