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小さな、小さな南の国。
大国ひしめき合う大陸の南の端。
競いあう大国から目を向けられることがないほど、その国に力はない。あるのは、穏和な民と温和な気候。
脅威にならぬほどの小さな南国に、攻めいる大国はなかった。それは、深い深い緑に囲まれていたため。方位を惑わす森が、小さな国を守っていたのだ。
大軍率いて攻めいっても、小さな領土を得られるだけ。運が悪ければ、惑いの森で大軍は散り散りになるだろう。その絶好の機会に他国が乗らぬはずはない。小国を得るために、自国が危機に陥るのだ。
そうした状況から、この小さな南国は平穏な日々を送ってきた。
そう……
送ってきた。
送ってきたのであるが……
平穏な均衡は崩されようとしていた。
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