1章:さえずり

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 小さな、小さな南の国。  大国ひしめき合う大陸の南の端。  競いあう大国から目を向けられることがないほど、その国に力はない。あるのは、穏和な民と温和な気候。  脅威にならぬほどの小さな南国に、攻めいる大国はなかった。それは、深い深い緑に囲まれていたため。方位を惑わす森が、小さな国を守っていたのだ。  大軍率いて攻めいっても、小さな領土を得られるだけ。運が悪ければ、惑いの森で大軍は散り散りになるだろう。その絶好の機会に他国が乗らぬはずはない。小国を得るために、自国が危機に陥るのだ。  そうした状況から、この小さな南国は平穏な日々を送ってきた。  そう……  送ってきた。  送ってきたのであるが……  平穏な均衡は崩されようとしていた。 .
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