1章:さえずり

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 当初、惑いの森を抜けるだけであった宣言は、各国を巡るにつれ変化していった。より競争性を高めて、姫が祭り上げられたのだ。  南国の王は苦虫を潰す。  惑いの森だけでなく、娘まで差し出せというのかと。  しかし、受け入れねば……小さな国は大国に飲まれるだろう。それも、惑いの森をいち早く抜けた最強な国に。  王は穏和な民を思う。国の頂きにある者として、民を守る役目は王たる者が担う。そのためには、娘を差し出す以外にない。  変化していった宣言が、この南国に向かないうちに。この南国を落とした国が勝国だとならぬうちに。  大国の戦が、この南国で行われないように。  王は宣言するしかなかった。 「あの籠の中にサラ姫が待っている! 各国の王子たちよ! いち早くたどり着いた者がサラ姫を手に出来るのだ!」 .
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