1章:さえずり

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 ……  ……  ーーパーンーー  遠くで鳴らされた始まりの合図。サラは、惑いの森の彼方に視線を向けた。 「始まったのね」  サラの視線は空へと移る。 「放たれたい……」  空には優雅に羽を広げた鳥たちが見える。サラは、手を握りしめた。  窓の横のテーブルに一冊の本。サラはそれを見つめる。表紙には青き薔薇が一輪、荒野に華やいでいる。 「……ううん! 違うわ」  サラの声に力がこもる。つかつかと開け放たれた籠の窓へと進んだ。  そこからの景色は、王子率いる大国の精鋭が、惑いの森を進む動きが一目瞭然である。  サラはスゥーと息を吸い込んだ。  さえずり  サラは歌い出す。  小鳥であるなら、さえずらないと。サラの美声は人の心を惹き付ける。 『さあ、ここまで来るがいい』  サラは競う王子たちに導の歌をさえずった。 『惑わず来るがいい』  サラの心に"一輪"が芽吹いた。 .
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