第3章

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雪也は13の年から莎紗羅の父親-隆文-について店の仕事を学んでいる。 今では一番頭の隆文ですらやり込められる事がある。 もともと老舗であった季伊國屋をここまで大きくしたのは上総、その上総の息子も優秀であった。 「莎紗羅は雪也の嫁になるんじゃなかったのか?」 「「だ、旦那様」」 慌てる隆文と志津、顔を赤らめる雪也。 「あたし雪也様のお嫁さんがいい」なんて言ってたのは7、8歳の頃の話。 この頃の莎紗羅は雪也の前に出ると真っ赤になりろくに話せない。 上総と妻の美耶は隆文と志津を使用人としてではなく友人としてあつかう。 娘の莎紗羅も実の子の様に接してくれた。 美耶は雪也を産んだあと身体をこわし、幾度かの流産のあと子を儲けるのを諦めた。 これほどの大店の主人となれば妾を囲う者もいる。 しかし上総は美耶以外を必要としなかった。 昔、美耶が泣く泣く離縁してくれと言った事があった。 しかし上総は 「おれの妻はお前だけ!たとえお前が死んでも後添いは貰わん!!」 と。 雪也以外の子を持てなかった夫婦は莎紗羅を娘の様に扱った。 皆に愛情を注がれ莎紗羅は、素直に育っていった。 その幸せはずっと続くとおもっていた。 あの日が来るまで…………………
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