第1章

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『ヤバイナ、アノ娘』 「ああ、よく耐えている」 その小さな泉は針葉樹に囲まれ知る者は少ない。 泉近く、一際高い針葉樹の上に人影があった。 物理的に細い枝の先に人が立つなど不可能。だが確かに立っている。 灰色のマントに身を包み、葦で編んだ笠を被っている。 場所を考えなければただの旅人にみえるだろう。 その人物の肩に黒猫が乗っている。 娘も木上にある影に気付いたなら恐怖しただろう。 しかしその人物も猫さえも気配がない。 一人と一匹は嘆き続ける娘をしばし見つめ、消えた。
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