第2章

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賑わう町を遠く離れ山の方へ向かう娘。 麓に村というほどではないが数軒の家がある。 一軒一軒の間はかなり離れている。家の構えもみすぼらしいあばら屋から、 貴人の別荘の様にしっかりした作りの家も。 娘は端の方にある中でも一番立派な家をめざす。家の周りを土塀で囲ってあるのはここだけだ。 玄関から入らず裏に回り木戸をそっと開ける。 作られた当初は綺麗な庭だっただろう、今は手入れをするものが無く雑草が蔓延っている。 お勝手口の方に回れば井戸がある。娘は井戸から水を汲むべく、桶を落とした。 「莎紗羅?」 桶が水を跳ねる音を聞きつけてか勝手口から女が出てきた。 「お、母さん」 母親は持っていた籠を放り出し莎紗羅の方へ駈け出す。慌てたせいか母親は3歩も行かず敷石につまずいた。 「お母さんっ」 莎紗羅はダッと母親に駆け寄り転ぶ寸前を支えた。 「駄目だよ、走っちゃ」 「ごめんなさいね、嬉しくってついね」 そう言う母の眼は潤んでいた。
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