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「……あの、何か」
「あのメガネはなんだ。」
「へっ?」
ビクビクしながら左を見ると、眉間に見事な縦じわを作った社長が『不機嫌』を絵に描いたような顔でハンドルを握っていた。
「え、と……?秀……、柏木 秀って言って、隣の席だったんですが……。」
「……距離が近すぎるんじゃないのか。」
へ?距離?
「そうでしたっけ……?ぅわっ!」
キュキュっと、ハンドルを切られて思わず左側、運転席に振られる。
どこへ行くのか、車は通勤ラッシュをすり抜けて走って行く。
「……あの、どこに……?」
それにも答えずに、ただ静かにカーステレオだけが流れていた。
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