第1章

4/6
前へ
/17ページ
次へ
「この白菜120円! そこのきゅうり3本80円でどうだい!」 野球帽を被り、腰に八と書かれた エプロンを巻きいかにも八百屋っと いう感じのおじさんが大声を出し、 客引きをしているのを皮切りに 朝市は活気であふれていた。 私は足を止めずに 各店舗の商品を流し見ながら 市場のはしっこまで到達した。 はしの方になると人通りも少なく 遠くの方で先ほどの 八百屋のおやじの声が聞こえいた。 (あのオヤジ声よくとおるな) そんな事を思いながら、 ぼちぼちバス停に戻ろうと 来た道を帰ろうとしたとき。 「お兄さん」と後ろから声をかけられた。 びっくりして振り返ると、 そこに一畳ほどしかない ござの上に紺色の着物に黒い羽織物をまとい、 立派な白ひげを蓄えて 老人がちょこんと座っていた。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加