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「奈緒、早くこっち来いよ」 食事の後片付けをするわたしを、ラグの 上でゴロゴロする亮輔さんが、呼んでいる。 付き合う前は、クールで近寄りがたかった亮輔さん。 けれども付き合ってみると、彼は意外に甘い人だった。 手を繋ぐのは当たり前。 肩を抱いたり、腰に手を回したり。 今日もそうだったけど、人目も気にせず 抱き付いて来たり。 嬉しいけど、知ってる人の前では、 ちょっと恥ずかしい。 「はい、亮さんも飲むでしょ?」 「ん、良い匂い。なに?」 湯気の出るマグカップを2つ持ち、ラグの上に 戻ったわたしに、彼が訊ねる。 「ホットレモネード。風邪予防も兼ねて、 寝る前に飲んでるの。体も温まるから」 「ふーん」 「あれ、いらなかった?」 「ああ。だって今夜は要らないだろ」 「え、なん、でっ!」 ニヤリと笑みを浮かべる亮輔さんに、トンと 肩を押され、あっけなくラグの上にひっくり返る。 「まさか忘れてねえだろ?帰ったら温めて やるって言ったよな」 仰向けに転がるわたしの上に、亮輔さんの 大きな体が覆い被さってくる。 確かに言ったけれど、まさか本気だなんて 思ってなかった。 しかも、こんなに性急に。 「ダメだよ。明日試合なのに」 「んなこと関係あるか。むしろ明日 試合だからこそするんだろ。景気づけだ」 「なに、その理屈」 「いいから、もう黙れ」 言葉通り、実力行使で私を黙らせる。 「……ダメ……亮っ……」 息継ぎの合間の僅かな隙に、もう一度 抵抗を試みる。 「そんな声で言っても説得力ねえよ。 観念しろって」 そう言う間も、彼の大きくて厚みのある手が、 体の上を滑り降りて行く。 これは形ばかりの抵抗。 本当は私だって望んでる。 亮輔さんとの触れ合いは、私にとって、幸せで 大切なものだから。
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