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制限速度ギリギリ、抜け道を使って 最短距離を走る。 運の良いことに、あまり信号にも 引っかからずに、車は順調に進み、 集合場所の駐車場になんとか滑り込んだ。 「お、来たぞ!亮輔!」 「てめえ、大事な試合の日に何やってんだ!」 「彼女とイチャついてんじゃねえぞ!」 移動用のバスの外で、亮輔さんの到着を 待っていた松本さんが、大きく手を振り、 バスの窓からは、たくさんの怒声が 飛んでくる。 「サンキュー奈緒。後からゆっくり来いよ」 「うん、怪我しないで、頑張ってね亮さん」 「任せとけ。じゃあ行ってくる。 っと、忘れ物だ」 ドアを開けて降りかけた彼が、向きを変え、 後頭部に手を当て、わたしの頭を引き寄せる。 チュッと軽く唇を合わせ、颯爽とバスに 乗り込んだ。 「もう、遅刻してるのに何してんだか」 呆れながらも、口元が緩む。 発車したバスから手を振るみんなに、 車から降りて手を振り返した。 バスを見送り、後を追いかけるため、 自分も車に乗り込みエンジンを 掛けようとした時、 「っと、その前に、メイクを……」 スッピンだったことを、思い出し、 誰もいなくなった駐車場で、手早く メイクを始める。 「でも、良かった。間に合って。 ヒヤヒヤしたよ」 でも、何とか間に合ったから良かったものの、 遅刻していたら、とんでもなことだ。 今度から、こんなことも想定して、 早めに目覚ましを…… いやいや、スイッチを止められたんだから、 それじゃあ意味が無い。 何か他の対策を…… メイクをしながら、今後の対策を講じて いると、窓ガラスを叩く音に気付く。 視線をやると、外に明菜さんが立っていた。 その表情は明らかに怒っていて、 目が合うと、僅かに顎を杓った。 これは…… 出て来いってこと、だよね? たださえ苦手な人なのに。 でも、無視することなんてできない。 仕方なくコスメを置いて、車を降りた。
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