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「そんじゃ、奈緒ちゃんにいいところ 見せられるよう、頑張ろうぜ」 「おまえに言われるまでもねよ」 拳をぶつけ合い、それぞれの場所に分かれた。 それにしても、奈緒がスッピンだったことに あいつが気付いていたとは。 油断も隙もあったもんじゃねえ。 「水谷さん、今日もよろしくッス」 「よう、亮輔。朝っぱらから派手な登場 だったな」 クルクルとボールを弄びながら、 水谷さんが笑う。 俺と逆サイドの右ウイング、キッカーも 務める水谷さん。 キャプテン松本さんと同期で、スピードと スタミナ両方を併せ持つ、チームの得点王。 俺の目標とする大先輩だ。 「よし、揃ったな。今日は鉄壁の守備を誇る パイレーツ戦だ。俺たちバックス陣は、 とにかく走り回って相手を撹乱していく。 どんどんパスを回して的を絞らせるな。 スピードなら俺達が上だ」 「「「「「「ウッス!」」」」」」 「各自、自分の仕事をきっちりやれ。以上」 「「「「「「ウッス」」」」」」 水谷さんに気合を入れられ、それぞれ ウォーミングアップに戻って行った。 「亮輔、聞いたぞ。代表メンバーに 入るかもしれないんだって?」 みんなに続こうと走りかけた俺を、 水谷さんが呼び止める。 「そうなんスよ。現代表が引退するとか」 「チャンスだな」 「さあ?どうかな。俺は今回落ちてますからね」 先頃行われたワールドカップ。 候補に選抜されて合宿に参加したが、結局俺は 最終メンバーには選ばれなかった。 昨日のヘッドコーチの話はこの件だ。 そういえば、奈緒に話すのを忘れてた。 「後で言わなきゃな」 今は目の前の敵を倒すのが先。 相手は去年惜敗したチームだ。 今年こそ、俺たちが優勝する。 そう決意を固めて、グラウンドに駆けだした。
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