2

8/10
2156人が本棚に入れています
本棚に追加
/33ページ
_____ ____ 「おお、やってるわね。 どう、我が社の戦士達は?」 前半戦もそろそろ終盤。 ボールはキープしてるのに、強固な フォワードに阻まれて、得点に結び つかない状態が続いている。 「遅いよ、芳恵。早く応援して。 少し押してきてるの。今から水谷さんの ペナルティゴールよ」 「水谷さんですって!?早く言いなさいよ。 水谷さーん、頑張れー。決めてー!」 大の水谷ファンである、芳恵の声援が 届いたのか、難しい角度のキックが決まり、 両チームを通して、初の得点が入った。 それを機に、勢いづいたレッドアローズは、 更にワントライ、ワンキックを決めて、 リードを保ったまま前半戦を折り返した。 「良かった。前半は怪我も無く終わって」 「ホント、奈緒ったら、いつでも そんなことばかり考えてるんだから」 「だって……」 無事に私の所に戻ってきて欲しい。 そう思うのは、ラガーマンの恋人として 失格なのだろうか? 「ねえ、芳恵。私ってアスリートの 彼女に向いて無いのかな?」 「なによ、藪から棒に」 「ちょっと、いろいろあって」 いきなり深刻な顔でそんなことを言い出した 私に、芳恵が怪訝な顔をする。 「誰かに何か言われたの?話しなさいよ。 ちょうどハーフタイムよ」 「芳恵~」 頼もしい親友の胸に縋りつく。 今朝あった事を、一から全て、包み隠さずに 彼女に話した。 「あの女~。偉そうに何様のつもりよ!」 「芳恵、落ち着いて。人目が……」 私の話を聞いた芳恵が、紙コップを握りつぶす。 自分から相談したくせに、この場で彼女に 話したことを後悔した。 だって、芳恵がこんなに怒るとは、思わな かったんだもん。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!