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「あんたは悪くないわよ。亮輔さんは 何も言って無いんでしょう? てか、今日のは明らかに亮輔さんの せいじゃないの」 「でも、試合の前日なのに、家に連れて 行った私にも責任が……」 「泊ったのは彼の意思じゃない」 芳恵が、更に紙コップを捻り潰す。 「奈緒!あんな女の言うことを真に受けちゃ だめ。亮輔さんがあんたに満足してるなら、 それで良いのよ」 「そうなの、かな……?」 「そうに決まってるでしょ。何を弱気に なる必要があるの。超ラブラブのくせに。 私にちょっとくらい幸せを分けなさいよ!」 ガシッと肩を掴まれ、真剣に諭された。 そうだよね。芳恵の言う通りだ。 亮輔さんが私で良いと言ってくれるなら、 誰が何と言おうと、関係無い。 「ありがとう、芳恵に相談して良かった」 持つべきものは親友。彼女は本当に頼りになる。 「でしょう?そう思うなら、私に男を 紹介しなさい」 「せっかく人が感動してるのに、 台無しにしないでよ」 「こっちも切実なのよ!」 最後は芳恵の冗談とも、本気ともわからない セリフのおかげで、嫌な気持ちも吹き飛んで 行った。 すっかり気分が軽くなったおかげで、 後半戦の応援にも、熱が入る。 前半リードを許したパイレーツは、 焦っているのか、ラフなプレーが 目立ち始めた。 後半中頃、ラインアウトからボールを キープしたレッドアローズ。 キャプテン松本さんを中心に、横一線、 グラウンドに陣を組む。 赤いユニホームの男達が、縦横無尽に パスを繰り出しながら、敵陣に向かって 矢のように走り出した。 チーム名の由縁でもある、お家芸の コンビネーションプレイ。 スタンドの観客から、大歓声が沸き上がる。 「出た出た、これを待ってたのよ。 行けっ、止まるな、走れー!」 「亮さーん、頑張ってー!」 最後にボールを持ったのは亮輔さんだ。 右に、左に敵をかわし、敵陣インゴールに 飛び込む。 その時、 ひと際大柄な敵のフォワードが、宙を舞う 亮輔さんに、危険なタックルを仕掛けた。 足場のない亮輔さんが、タックルをまともに 受けて、吹っ飛んで行く。 1回、2回と、枯れた芝の上を転がった 彼の体が、どんよりと雲の垂れる空を 仰いで、動かなくなった。 「……嘘……亮さん……」
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