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「医務室、ここかな?」 相手の危険なプレイで途中退場した亮輔さん。 試合は再開したけれど、彼が心配で、 応援どころじゃない。 やっと医務室を探し当て、扉を開けようと した瞬間。 「何してるの?関係者以外立ち入り禁止よ」 背後で聞き覚えのある、嫌な声がして、 ビックっと扉から手を離した。 立っていたのは、思った通りの人だ。 「佐竹さん、私、亮輔さんの様子を……」 「だから何?家族でも無い、ただの彼女でしょ? 部外者じゃない。入れる訳にはいかないわ」 「そんな……。じゃあせめて、怪我したか どうかだけでも」 あんなに酷く、地面に叩きつけられたのだ。 病院に運ばれなかったから、大した怪我じゃ ないのかも知れない。 けれど、私にとっては大きい小さいの 問題じゃない。 「怪我してても私がいるから心配いらないわ。 資格も持ってるし。代表候補の大事な体だもの。 手厚く看病するわよ。あなたは応援に戻れば?」 「代表候補って……?」 「聞いて無いの?あなた、本当に彼女? そんな重大な事を、聞かされてないなんて」 明菜さんが意地悪な笑みを浮かべる。 「亮輔は日本代表の有力候補に挙がったの。 そんな事も知らないあなたを、中に入れる なんて、なおさら無理ね」 「明菜さん!」 明菜さんが、私を押し退け、医務室に入って行く。 誰もいない廊下に、ぽつんと取り残された。 「亮さん……無事なの……?代表って何? 訳がわからない……」 ジワリと涙が浮かぶけど、泣いてる場合じゃ無い。 どうにかして、彼の無事を確かめたい。 少し考えを巡らせ、廊下を駆け出した。
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