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「問題ねえよ。それより、話声がした気が したけど、誰かきてたのか?」 「ああ、熱烈なファンがいてね。 追いかえしたわ。それより、早く状態を 見せて。後で後遺症でも出たら……」 「おっと、それ以上寄るな」 背を屈ませ、顔を覗き込もうとする明菜を、 拳を見せて押し返す。 これで引き下がらないなら、本気で殴る つもりで。 「なあに、ひどい扱いね。こんなにあなたを 心配してるのに」 「あんたの心配なんて要らねえ」 俺の殺気に押されたか、引き攣った 笑みを浮かべて後ろに下がって行く。 心配なら、きっと奈緒が、たっぷりと してくれる。 俺の望む通りに甘やかし、世話をしてくれる はずだ。 そう考えると、口元が緩みそうだった。 「なに?あのベビーフェイスの彼女が 心配するとでも?あなたがこんなことに なっているのに、様子を見にも来ないのよ? それで恋人と言える?」 「遠慮してるんだろ。あいつはそういうやつだ。 あんたと違って、奥ゆかしいんだよ」 あいつはいつでも周りに気を遣って、けして 出しゃばろうとしない。 もっと恋人としての立場を利用して良いのに。 「そうかしら、ただ鈍いだけじゃないの?」 「おい!」 「亮輔、あの子はあなたに似合わないわ。 あの子と付き合い始めてから変よ。 クールなあなたは、どこにいったの?」 「そんなこと、あんたにとやかく 言われる筋合いねえよ」 「日本代表の彼女が、あんなお子様じゃ みっともないと思わない?」 シナを作って、ニッコリ笑う。 なるほど、それが狙いか。 急にまた、纏わりつくようになったのは、 俺が代表メンバーの最有力候補になったから。 この女が理由も無く、動くはずが無かった。 「あんたなんかより、奈緒の方が よっぽど相応しいよ。全てに於いてな」 こいつにとって、男は自分のステータスを 上げるための道具。 俺がこんな見え透いた女に靡く訳がねえ。 明菜は奈緒には敵わない。 ただ好きだから、俺の傍にいてくれる奈緒には。
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