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「どうしてよ。あの子はラグビーの知識も無い。 ファンやマスコミへの対応は?そんなこと、 あの子にできる?見た目だって……」 「あんたはわかってねえ。俺達がそんなもの 望んでると思ってるなら、マネージャーすら 失格だな」 いつの間に入って来たのか、俺では無い 男の声が割って入る。 「澤君!」 「終わったか。結果は?」 着替えも済ませ、大きなスポーツバッグを 2つ抱えた澤が、戸口に立っていた。 「俺等の勝ち。おまえの退場で、みんな 怒り狂ってよ。コテンパにしてやったぜ」 「ハッ、当然だ」 「ほら、着替え。コーチが今日はゆっくり 休めってさ」 「サンキュー。助かる」 澤の差し出したバッグを受け取り、 ベッドのカーテンを引いた。 「なあ、佐竹さん。何がしたいの? この2人の仲に割って入れると思ってるなら、 あんた、頭おかしいぜ」 「そ、そんなこと、わからないじゃない」 カーテン越しに聞こえる2人の会話。 珍しく澤が会話で押し勝ってる。 体で押すの得意だが、喋りとなると、人が 良すぎて、ヤツは大抵丸め込まれるのに。 「わかるよ。亮輔と奈緒ちゃんを見てれば。 大体あんたは俺達のこと、理解できてねえし」 「澤の言う通りだ。ファンやマスコミの 対応はあんたの仕事だろ。俺等はただ、 一生懸命に応援してもらえりゃ良いんだ。 欲しいのは知識じゃなくて、真心なんだよ」 「そうだよ。彼氏のために化粧を諦めて 朝飯作るなんて、あんたはできねえだろう?」 「全くだ。あんたの化粧が崩れてるところ、 見た事ねえもんな」 「そうそう。素顔は別人かも知れねえぞ」 「なんですって!」 明菜をそっちのけで、澤と頷き合っていると、 バタバタと足音がして、またしても闖入者が 飛び込んで来た。 「奈緒居る!? あんたいつまで私を待たせる気…… あら、取り込み中だった?」 入って来たのは、奈緒の親友だ。 「奈緒は来てないぞ。一緒じゃなかったのか?」 「亮輔さんの様子を見に行くって。それから 帰って来ないのよ。てっきり一緒だと……」 芳恵ちゃんがキョロキョロと、部屋を見回した。
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