出会い

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「ただいま!おかえり!初めまして!今日からココがキミの新しい家だぞー!」 ご近所迷惑になるかならないか、ギリギリの声量で帰宅。 今まで(と言ってもたった一週間だが)一人での帰宅だったのが、今日は一人と一羽、生命体二つぶんでの帰宅だ。 やった。 自分でも何考えてるのかわからなくなってきた。 何はともあれ、とにかく嬉しい。 小さな箱に入れられて、我が家に迎えられたキミを、おがくずを敷き詰めた快適な新居(虫かご)にふんわりと移す。 キミ、だとなんかくすぐったいな。 あぁ、名前を考えなくっちゃ。 などとぼんやり考えていたら、キミはギャンギャンと鳴き立てはじめる。 「あっ、ごはんかな? ちょっと待っててね!」 瞬間湯沸かし器でお湯を沸かし、粟玉とヒナ用の栄養がたっぷり配合された餌に注ぐ。 このまますぐ餌付けすると、火傷してしまうので少し冷まし、専用の給餌スポイトで喉に押し込む…。 文鳥の飼い方の本はあらかじめ読んでいたけど、初めてはやっぱり緊張するなぁ…。 あ、口からこぼれちゃった…。 もっと奥まで押し込んでもいいのかな…。 ギャンギャン。 それにしても、小さな体でよくこんな大きな声が出るんだね。 下手すりゃ私より声大きいぞ。 やるなぁ。 ギャンギャン。 うん、ちょっとだけ餌やり慣れてきた。 私もやるなぁ。 ふふん。 ギャンギャン。 …え? まだ食べるの? そのう(鳥が一時的に餌を貯めておく袋)もうパンパンだよ? 破裂しちゃうよ? …。 やっとお腹いっぱいになったみたい。 食べ疲れたのかな、寝ちゃってるよ。 …えへへ、可愛いなぁ。 そういえば、名前まだ決めてなかった。 食いしん坊で、ギャンギャン鳴くから、ギャン坊とかどうだろう? 我ながら名案じゃない? うん、いいぞ、これ。 …。 いや、幼名にするにしても酷いな。ごめん。忘れてくれ。 一人で悶々と考えてみるけど、いい名前は浮かんでこない。 名付けるのって難しい! 「ねぇ、キミはどんな名前がいい?」 …キュ。 そんな音がキミから聴こえた。 「キュウ…。キミは、キュウ」 まるでパズルの最後のピースがぴたりとはまるように、その名前が浮かんだ。 「今日からよろしくね、キュウ」
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