兄が残したもの

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目の前には知らない男の人が、心配そうな眼差しで私を見ている。 「えっと…そこの公園ベンチあるから、休みましょう」 「…本当に大丈夫ですから…」 「ダメですって!今にも倒れそうなのに」 彼は、私の手をつかんで公園に向かう。 「やめて!!」 手を振り払い、彼の好意を拒絶する。 優しくしないでよ…。 今の私は、優しい彼に、この苛々をぶつけてしまう………。 「…………」 「お願い……一人にして下さい…」 少し沈黙の後、彼が口をひらいた。 「……あの…栗原 三咲さんですよね?」 「……?」 私の名前なんで、彼が知っているのだろう……私は彼を知らないのに。 「僕は、成瀬 弘って言います…」 「…」 「僕は、栗原さんのお兄さんと同じ空手部なんですけど、お兄さんには、可愛がってもらってました。」 「お兄……」 「お兄さん…栗原先輩の事は…」 「………」 「それで……栗原さんに渡したい物があるんです。今いく場所に付き合ってくれませんか?」 「渡したい…もの?」 「どうしても、渡したいんです。お願いします。」 彼は、深いお辞儀でお願いしてきた。一人になりたい…でも、兄と関係のある物かもしれない……。 私は彼に付いていく事にした。
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