兄が残したもの

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━弘side━ 僕は、栗原さんを連れて、ある場所にやって来た。 そこは、空手部の部室。僕と栗原先輩……栗原さんのお兄さんが、使ってる部室。 「ここです」 「空手部…部室?」 「そうです。今開けるので、ちょっと待って下さいね」 「………」 部室は一年生が鍵開けを担当してる為、鍵は僕が持ってる。 栗原さんに渡したい物が、ここにある…栗原先輩が亡くなってから、ずっと彼女に渡したかった。 「さぁどうぞ。」 「でも…」 「大丈夫ですから、そこの椅子に座ってて下さい」 彼女は躊躇いながらも、椅子に座ってくれた。 僕は数あるロッカーの中から、小さな箱を取り出して、彼女に渡した。 「何?これ」 「それ栗原先輩が、大切にしてた宝箱です」 「お兄の…」 「開けて見て下さい」 彼女が栗原先輩の宝箱を、そっと開ける…その手は微かに震えていたけど、中身を見た彼女は、驚いていた。 「…これ………」 「いつも僕に自慢してたんですよ。妹が作ってくれたんだって」 宝箱の中身は、一枚の写真と綺麗に並んだミサンガ。栗原先輩が大切にしてた物だ。 「………」 「栗原先輩…試合の前はミサンガに誓うそうです。必ず勝つって。」 「お兄…強いから…」 「どうして、そこまで必死に練習して戦うのか、聞いた事あるんです」 「……?」 「俺が負けたら妹が泣いちゃうからかな。でも勝ったら最高の笑顔で笑うんだよ。これが、めっちゃ可愛いんだ。って自慢ばっかりでしたよ」 「…お…にぃ……」 「後写真は、僕には見せて貰えませんでしたけど、栗原さんですか?」 「私とお兄…お兄が大会で優勝した時の…」 栗原さんは、写真を見つめて、なんだか苦しそうだった…今にも泣きそうで、でも必死に堪えてる感じがする…。 「栗原さん…なんで泣かないんですか?」 「え…?」 「我慢する必要はないと、僕は思います」 そんな勝手な事、言える立場じゃないけど…彼女を見てると、苦しくて、いつの間にか僕は泣いていた…。 「…なんで…貴方が泣くの?」 「ご……ごめ…んなさ…い」 涙が止まらなくて、彼女を見れなかったけど、彼女が泣いてるのがわかった。
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