兄が残したもの

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僕は彼女にちゃんと渡せたましたよ…。 栗原先輩…僕は心のなかで呟いた。 まだ彼女への用は、終わっていない。 「栗原さん…あの…」 僕の言葉を遮るように、栗原さんが喋る。 「私ね」 「え…」 「私ね…ずっと泣けなかった…お兄が死んじゃったのに…泣けなかったの」 「どうしても許せなかった……お兄を殺した奴…喧嘩なんてしてた人達…お兄が、命がけで守った人も…全部許せないの…」 「…………」 僕は何も言えない…言ってあげれない。 彼女は顔をあげて、僕を見てきた。 背筋が凍る衝撃…身体中鳥肌が立ったのが、わかる…。 彼女の瞳は、怒り?悲しみ?なんだか、分からないけど 弱々しくて、でも訴えてくる強さがあった。 吸い込まれそうなほど、綺麗な真っ黒な瞳は…今の僕には辛いものでしかない… 彼女にもう1つ話さなきゃいけない事があるのに。 言えない。 その目がさらに黒く満ちてしまいそうだから………
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