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私は、閉じていた目を開き、合わせていた手を下ろす。
そして、目の前の兄の写真に語りかけた。
「お兄、行ってきます」
兄は、もうこの世に居ない。
亡くなったのは、今から一年前…。
突然奪われたお兄の命…。
本当に突然だったの…。
日曜日。その日の事は、はっきり覚えてる。
夕方から夜になる頃、一本の電話から私の人生は大きく変わってしまった。
プルルル プルルル プルルル
ガチャ
「もしもし神崎です」
電話に出たのは母だった。
「もしもし、私━━警察署の野田と言いますが、司さんのご自宅でしょうか?」
「はい」
「司さんのお母様でしょうか?」
「そうですが、司が何か……」
「お母様…落ち着いて聞いて下さい」
「……?」
「息子さんですが、事件に巻き込まれまして…」
「………?」
「今…━━━病院に、搬送されました。お母様今すぐに病院に来れますか?
」
「あの…え…?」
「息子さんは、今意識不明の重体です」
私が、家に帰ってきたのは、その時だった。
電話の前で立ちすくむ母…。
話しかけても、反応はなく、ただ体は小刻みに震えていた。
母が持っていた受話器から、微かに聞こえた声に気づき、私は、母から電話を代わって母が震えてる理由を知ったの…。
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