麗しの姫君 10年後

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僕たちは家族を持った。簡単ではないけれど、毎日がささやかに楽しく過ぎてゆく。あぁ、世界はこんなに綺麗だったんだと、ふたりの笑顔を見て幸せな気持ちは毎日更新され続け、ふたりを愛しく思い続ける。 「僕の姫。」 温かな春の光に満ちた縁側ででうたた寝をしていたら、突然眠りの中に飛び込んできた声に、目を覚ました。目の前にカンナがいて、僕の手をとり口付ける。びくりと動揺してしまって、すぐさま答えた。 「僕は姫じゃないよ?」 「僕がナイトになって迎えにくるから。」 可愛く微笑んでいるのは、小さな…天使なのか、小悪魔なのか…。無防備に寝そべっている僕の胸の上に顔を乗せ目を閉じた。 そのまま眠ってしまったかのように、あまりに心地よさそうにしているから、僕は起き上がることもできず、滑らかな髪を撫でる。 お茶を淹れてきてくれた薫が僕たちを見つけ、ふわりと微笑み、僕の肩に顔を埋めるように寄り添った。カンナの背中の上で柔らかく手をつなぐ。 僕たちは今も一緒にいる。温かく優しい光の中で。 image=496340733.jpg
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