2.好きか嫌いかだけで言えば*

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「まだ決めかねてる?」 「ええ、まぁ……」  夏休みに入り、やはり時間を持て余すことの多かった俺を、木ノ本さんはたびたび外へと連れ出すようになった。  木ノ本さんの車の助手席に乗り、向かう先は様々で、ある時は買物だったり、食事だったり、最近では海水浴に行ったりもした。全て二人きりで。  しかもそれは回数を重ねるたび頻度を増して、最近では〝暇さえあれば〟と言っていいくらいになっている。 「ああ、でももし返事を急ぐなら」 「急がない。言っただろ、二年くらいは余裕で待てるって」 「余裕なんて言いましたっけ……」 「あれ? 言ってなかった?」  赤信号に引っかかり、木ノ本さんは笑って俺を見た。自然と空気まで和らぐような穏やかな笑顔。  束の間俺も、その見慣れた光景にほっとして――、しかしその一方で、不意に胸につかえを感じた。  まただ、と思う。木ノ本さんと一緒にいると、時々こんな風になる。  胸の奥が微かに疼く。重なる澱が深みを増して行くような、心許ない気分になる。得体の知れないそれは今にも掴めそうで、その実いつも掴めない。  状況から言って、原因はきっと木ノ本さんにあるのだろうと思う。だけどどんなに考えてもそれ以上の答えは出ずに、今日もまたそこで終わってしまう。
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