0.prologue

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 仲矢は小学から高校まで、何をするにも一緒の悪友だったが、高校を卒業してからこっち、その頻度は格段に減っていた。  大学自体は相変わらず同じだ。しかし、仲矢が在籍している学部と俺の学部とではキャンパス自体が離れており、それも電車移動を要する距離ともなれば、自然と以前のようにつるむことも出来なくなっていた。  加えて、現在の仲矢には特別な相手がいる。それも永遠に届かないと思っていた、長年の片想いが実っての恋人だ。  しかもその経緯は俺も大体知っていて、それどころか最後に仲矢の背中を押したのは俺だったような覚えすらある。  結果として二人が上手く行ったことは純粋に嬉しかった。なのに時々思い出したかのように溜息が出る。  理由は単に友達との時間が減って寂しいと感じているからだろう。なんだかんだ言って、いつも仲矢の隣には俺がいて、俺の隣には仲矢がいたんだから。  まぁ、いつかはこうなると思ってはいたんだけど。  俺は手の中の携帯をポケットに戻し、そうすることで意図的に意識を切り替えた。そうすれば胸の奥に生じていた微かな澱も、また自然に鳴りを潜めて行くのだ。
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