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「とりあえず、俺これからバイトがあるんで、できれば手短にお願いしたいんですけど」
部室を出た時刻は十九時前だった。居酒屋のバイトの開始時刻は二十時で、それまでに一度家に帰ってシャワーを浴びる必要がある。
急かすように言うと、ようやく木ノ本さんは本題に入った。
――だけど、
「俺の知り合いが、草野球の社会人チームを作ってるんだけどね。良かったら君、そのチームに入ってくれないかなと思って」
その内容もまた突飛なもので、俺は再び瞠目した。
「まぁ、下手の横好きって感じのチームではあるんだけど、練習や試合はそこそこやってるから……」
「や、あの……」
返す言葉がすぐには見つからない。だって本当に話が見えないのだ。
確かに俺は昔から野球が好きだった。実際高校でも野球部に入っていたし、その延長でいまでも野球サークルに在籍している。
でも、だからと言って、一度でも木ノ本さんに外でチームを探しているなどと話したことがあっただろうか。
……いや、あるはずがない。
そもそもそんなこと、考えたこともなかったんだから。
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