#2 はつ恋

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 こんなルーティンを、幸生はずっと続けてたのだろうか。学校が撥ねてダッシュでバスに乗り、シネコンまでのモールのコンコースを駆け抜け、窓口で学生証を提示し、チケットをもぎってもらい……  そこまで努力して映画を観ることができるか、桜は自問して不安になった。  幸生は映画マニアどころか、映画中毒だ。  それとも、求道者(ぐどうしゃ)か、殉教者。  桜には、そう思えた。  ショッピング・モール行きのバスに揺られながら、桜は気になっている疑問を素直に幸生にぶつけてみた。 「どうして木曜なの?」  吊り革を握りながら幸生が即答した。 「経験から、映画館がいちばん空いてるのが、木曜なんだ」 「なんで?」 「水曜はレディースデー、金・土・日は週末で混むだろ。きっと、その間に挟まれてるからじゃないかな」  なるほど、と桜は納得した。  同時に、そこまでして映画にのめり込む幸生に感心した。  バスがショッピング・モールに着く頃には、陽はすっかり西に傾き、シネコンの壁を朱に染めていた。  二人は並んでコンコースを劇場入口へと向かう。  冬の気配が辺りを覆い始めていたが、桜の心はほんわかと暖かだった。
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