#2 はつ恋

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 桜の両親が離婚したのは、もう8年も前のことだ。  幼い自分とは違って、もう分別もつく16歳。頭では理解してるつもりだが、そのたびに心がキュンとするのは、どうしてだろう。  桜が少し会話の流れを変える。桜が聞きたくないのももちろんだが、母もこれ以上『泰秀さん』と発音したくない様子だった。 「でね。その『名画座』っていうのが、市内にひとつあるんだって。クラスに、映画好きなコがいてね。そのコが言ってたの」 「へえー。映画館なんて、ショッピングモールのトコくらいしかないと思ってたわ、お母さん」  よし、うまく逸らした。不快なぬかるみにはまらずに済む。  桜は会心の心地だった。  さて、次のハードルに注力しなきゃ。  桜は、母を攻略するのが目的なのだ。 「でねでね、あの…… そのコが、その名画座に一緒に行こうって、行ってる ん だ け  ど…… 行っても、いい?」  ちょっとだけ、嘘をついた。  幸生と一緒に行く約束は、これからするのだ。
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