#1 インディアンサマー

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「ああ――。あの監督のが好きなんだけど、前のを観逃しちゃったんだよなあ。荻野は観てるの?」  えっ、と桜は、幸生の言葉尻を掴み、思った。 ――ひょっとして、   井崎くんて――  それを訊ねる前に、幸生のほうから問いが続いた。 「荻野ってさ……映画、好きなの?」  ベランダの陽溜まりに、ふわり、と暖かな風が桜と幸生の間を駆け抜ける。  桜の頬が火照っているのは、このインディアン・サマーの呼び込んだ空気のせいだけでは、なかった。
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