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「ああ――。あの監督のが好きなんだけど、前のを観逃しちゃったんだよなあ。荻野は観てるの?」
えっ、と桜は、幸生の言葉尻を掴み、思った。
――ひょっとして、
井崎くんて――
それを訊ねる前に、幸生のほうから問いが続いた。
「荻野ってさ……映画、好きなの?」
ベランダの陽溜まりに、ふわり、と暖かな風が桜と幸生の間を駆け抜ける。
桜の頬が火照っているのは、このインディアン・サマーの呼び込んだ空気のせいだけでは、なかった。
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