羅宇屋と竹屋

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羅宇屋と竹屋

   猫の爪のように細い月の下。  北公園の辻に、屋台が出る。  屋台と言っても、湯気のひとつも上がっていない。  屋根と、両側に目隠しがあるだけの、小さな門のような小屋。  肩へ担げば運べそうなそれに、今夜も明かりが灯った。  目隠し格子の中には、「羅宇」という墨書が見える。  前に出した縁台へ毛氈を敷き、角行灯を横に置いて。紺色半纏の店主は、胡麻塩頭へ手ぬぐいを巻く。  息を白く凝らせながら裏へ戻り、あかあかと燃える炉へ、鉄瓶を乗せた。  そばの小さな椅子に腰を据え、細い竹を磨き始める。  店先に並ぶのは、一尺ほどの長物から、短いが豪勢な細工もの。燻しの延べ銀や、艶めくびいどろ製など。  とりどりの、煙管。
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