第1章

4/8
前へ
/10ページ
次へ
 「ご家族が?」  「はい。出来れば山之内さんの家族構成などを知りたいんすけど」  本来ならば入居者の個人情報は控えたいんですが。この事件は既に公になっておりますし、故人となられたので此方での守秘義務は消滅したように思います。  「確か息子さんで、銀行員の店長をされておられるとご本人は仰ってました」  山之内さんの緊急連絡先はその方の住所になっております。名字は違うので山之内さんが離婚後は奥様が親権を獲得されていたようですが。奥様は既に他界されておられます。  「あの、山之内さんの面会情報ならば面会簿をご覧になられた方が宜しいかと。然し。離島さんが山之内さんとスタンガンを結び付けたがる根拠はなんですか?」  「キャバクラ嬢は護身用にスタンガンを携帯する方もおられると聞いたので、その線を疑っています。ひょっとしたらご家族の中にキャバクラ嬢をしている人がいたのではないかとも」  私は仕事上、様々な入居者のご家族と面会して来ましたがキャバクラ嬢と言う派手な装いのご家族をお見受けした事はありません。 ですが、施設にお見えになる時のみは普段着を着ていらっしゃるのかも知れません。  「なる程。凶器が本当にそうだとすると変じゃないですか?」  私は珈琲を一口飲んでから話を変えてみました。  「変?」  「何故犯人は身元がバレるようなものをわざわざ現場に残したのか。スタンガン程度ならバレないように隠す事も出来るのではないかと思います」
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加