第1章

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 「犯人はそれに毒を盛った可能性もあります」  「確かミネラルウォーターを持っていました。従業員か誰かに開けてくれと頼むような仕草は銀行の防犯カメラにはありましたが」  それに毒を盛った可能性が高くなりました。  「恐らく犯人は銀行の店長さんではないでしょうか。キャバクラ嬢の犯行と見せ掛ける為にスタンガンを現場にわざと残して彼女に罪をなすり付けたのではないでしょうか?」  「待って下さい」離島刑事が私の推測に待ったをかけました。  「なんでしょう?」  「それだと偶然によるものが強いように思いますが」  偶然ですか。確かに偶然銀行に訪れたキャバクラ嬢のバッグからスタンガンを抜いて犯行の偽装を行ったと言うのは偶然にしては出来過ぎているように思いますが、私は寧ろ、銀行員でなければ出来ない手口のように感じます。  「須田検事は、給料を引き出しに銀行に訪れた時に事件に遭遇したとの事」  「はい」  「詰まりは給料日だった訳です。給料日のどの時間帯にどのような客がどんな取引をしに来たかは、銀行員は、その過去の取引の記緑を作る事が出来ます。通帳を解約していなければ」  取引の日付、内容、金額、取引先の全てが明白にされる書類で、それは何十年以上前の記帳でも可能だと溜まった未記帳を記帳しに行った時聞いたことがあります。 それに取り扱いした銀行名もそれで判るので、キャバクラ嬢がどこの銀行を利用しているかも判ります。給料日であれば尚更です。
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