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藤宮京一は職場の探偵事務所へ向かう途中、すれ違った女を見て、立ち止まった。
その女は今朝のニュースで見た顔写真の女に酷似していた。
姫田七夕(ヒメダ・ナユ)。それが写真の女の姓名。
真偽を確かめるため藤宮は声をかけた。
「かわいい犬ですね」
女は声に振り向いた。
「この子、ハツアキっていいます」
「ほう。では、貴女と同じ八月生まれですね」
「そうなんです」と女はいってから首を傾げた。「なぜそれを?」
藤宮は女の反応に確信を持って、口をひらいた。
「普通、七夕(タナバタ)といえば七月を連想する。ボクも初めはそう思っていました。しかし、初秋(ハツアキ)と聞いて、間違いだと気づいた。初秋も、貴女の名であるナユ、つまり七夕(タナバタ)も、季語としてみれば八月を差します」
女は藤宮を警戒するように眉を顰めた。
「どこかで会いました?」
「いえ。ボクはただ、指名手配の写真を見ただけです」
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