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冬も近い秋空の下、僕は改めて思い知ることになった。
僕は女の子を好きになることが出来ない。
だからと言って男の子を好きになるわけではないのだけれど。
「ねぇ、上谷さん」
僕の名前を呼んだこの女の子は、とてもかわいいと思う。
だけど、思ったのはそれだけだった。
僕は恋がわからない。
「ごめん。実は、用事思い出して。帰るよ」
「え、あの」
この女の子とはインターネットを通して出会い、住んでいる場所も、歳も近いということでこうして友達にはなった。
友達のはずだった。
でも、実際に顔を合わせて感じた相手の好意は明白だった。
僕の名前は上谷浩介だ。
名前を教えるべきではなかったと思う。
彼女の中から、僕がインターネット上で使っていたハンドルネームは忘れ去られてしまった。
歩き出した僕の後ろを、彼女は一生懸命についてくる。
てちてちと、小さな歩幅で。
「そっか。用事、ですよね。仕方ないですよね」
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