僕は恋をすることが出来ない。

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 ○  たまに夢を見る。  僕がまだ子供だった時のことだ。  あれは確か10歳。  お盆の、父の帰郷に合わせて行った、田舎の森の中の廃墟。  僕は1人の女の子と知り合った。  名前は思い出せない。  だけど、とても美しい人だった。  目を細めて笑っていたのを覚えている。  白い肌。  髪は長く、絹のような滑らかさで、風が吹くと真っ白に輝いているワンピースのスカートと一緒に踊っていた。 「浩介」  僕の名を呼ぶ彼女の声は鮮明に思い出せる。  当時、10歳の僕よりも年上で、7年経った今では大人の女性になっているだろう。 「浩介。君は私にとって必要な存在なんだ。いつか、また会おう」  最後に聞いた彼女の声はとてもキレイで。  彼女は目を細めて僕の顔を掴み、僕はその声を紡いだ口と、キスをした。
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