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味は甘く、口の中を、彼女の舌が動いていた。
これが、初めてのキスの記憶。
僕は、いつもそこで目覚める。
あれから何度もあの町に行って、森の中の廃墟を訪れたけど、彼女と会うことはなかった。
思えば、あの時から女の子に対しての、何かが変わってしまった気がする。
いつか、また会えるだろうか。
ふと、スマホを見ると、昨日会ったあの子から連絡が来ていた。
『上谷さん、おはようございます。あの、もし良かったら、来週の土曜日、一緒に遊びに行きませんか? 観たい映画があって。どうでしょうか』
顔文字でデコレートされた精一杯の文字。
僕のハンドルネームは忘れ去られてしまったようだが、僕は彼女のハンドルネームを忘れてない。
『おはよう、カノンさん。スケジュールを確認してみるよ。でも、たしか用事があったはずだから、行けないかもしれない』
僕が送るのはそれだけだ。
これ以上期待させてはいけない。
僕は女の子を好きになることが出来ないのだから。
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