1.迫りくる突然の求愛

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「でもホントに時間がもぅ……」  言い逃げする気満々でノブを回し、力を込めた。  ドアを開いてすぐ戸口に足を踏み込むつもりで動いていた私は、開かないドアに体重の移動を阻まれ、少しつんのめる。  ノブを回し損ねた?  もう一度、意識して動く限界までノブを回す。  そして、勢いよくドアを押す。  やはり開かなかった。 「何で」  つい独り言を漏らしながら、今度は左右にノブを回してみる。騒音を立てることで焦りを散らすように、乱暴に回してしまった。  ノブはスムーズだ。  問題はドアなのだ。もしかしてと引いたが、ピクリとも動かない。  ノブ同様に、ドアも前後に揺らしてみたが全くの無反応だった。  無反応?  このドアには少し遊びがあり、ノブを回さずに開けようとするとガタガタと揺れる。  それは、鍵をした状態でも同じ筈だ。  なのに何で、その音も揺れもないのだ。  もしかして…… 「沖永さん? どうした?」  背中に、笹木さんが近づいてくる気配を感じる。  ドアが開かないのが霊現象だとしたら、彼女になんと言えば良いのだろうと、一気に焦燥が募った。  いや、しかし。  言わなくても良いか。別に、何も。
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