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取り敢えず、一定の答えを強制する彼の質問から穏便に逃れる術を、優先して探った。
「あの」
『なぁに』
「あの、貴方は…」
『ふふっ、今更だろう? 若菜の思う通りの存在だよ』
先回りして言葉を連ねる彼。
思う通りの、存在。
それは、私に害をなす存在だということの告白なのか。
いや、そうだよね、それしかないよね、と消沈しつつ、それならばと自分を奮い立たせる。
私への積極的な干渉がある以上、今までのように黙って傍にいる訳にはいかない。
如何にも優しそうな、か弱そうな存在であっても、オバケとの共存はできないことを私は嫌と言うほど確認させられてきた。
『ふふ、怖い顔』
私の集中力を簡単に削いでいく彼。
右手で私の頬を包んだまま、その親指を伸ばして私の唇をなぞってくる。彼の顔の位置は益々近付き、キスでもされかねない雰囲気だ。
『ふふっ』
彼の吐息を唇に感じたその次の瞬間、私の心臓が跳ねた時には、彼の唇は私の耳に寄せられていた。
私の顔の、左は彼の手で覆われ、唇も弄ばれ、右側に彼の顔。
急性高血圧(?)で私が死にそうだ。血管が詰まりかねない激しさで大量の血液が身体中を巡っていっている気がする。頭が飽和して熱い。
でも。
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