2. 幼馴染みは出会い頭からオカシイ

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五十嵐(いがらし)さん、ありがと。若菜は帰るから、また明日ヨロシク」  大きめの黒目をクリッとさせながら、真咲に対して凛々しく断言するあーちゃん。  小首を傾げる仕草が萌える。柔らかそうな肩までのツインテールが艶やかに靡いて、これがまた可愛らしい。 「えっ、これからテスト」  言い掛けた私の台詞は、あーちゃんに遮られてしまった。 「今の状態の若菜をここに置いとけるか。今日は帰るぞ」 「鞄が教室に」 「五十嵐さん、帰りに若菜んちに寄って。鞄をお願いします」 「いや、それくらい今」 「教室なんか、特に(オバケの)溜まり場じゃねーか。鞄は後で良い」  一々両断され、どれもこれも反論できない。 「待って。私も一緒に」  笹木さんが、付け入る隙を作らないあーちゃんに食い付いてきた。  しかし、あーちゃんの表情は崩れない。 「俺たちは今すぐに行きます。一緒は無理です」  笹木さんの必死さに滲む熱気はあーちゃんの冷ややかな瞳と対照的で、可哀想な程に一人相撲だった。  そんな印象を受けるのは、先刻の笹木さんの話のせいだろうか。
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