2. 幼馴染みは出会い頭からオカシイ

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 あーちゃんと何らかの関係があるような話振りだったのに、今見る二人にそんな親しげな様子はない。  マイペースを自覚する私でも、あーちゃんの冷淡な態度に『あーちゃんを笹木さんに取られた訳でなかった』と呑気な安心感を抱くほど楽観的ではいられなかった。  不信感めいた、ちぐはぐな不安が膨らんでいく。 「申し訳ないですけど、これ以上ここに長居したくない。話はまた今度お願いします」 「…わかりました。今日、私もお家に行くからお願い」  台詞の後半は私に向かっての懇願だった。  愛想は良くしかし明確に拒絶を表明するあーちゃんに、笹木さんもそれ以上は踏み込めないようだ。  気落ちしているのが色濃く表情に出ていて、心から申し訳なくなってくる。  あーちゃんは、当然の如くそんな笹木さんを視界から外した。 「若菜、階段は大丈夫か?」  あーちゃんが私を見るその目には、笹木さんと目を合わせた時と同様の強固な意志と、真逆の熱意がはっきり映し出されている。  私の方が居た堪れない。 「若菜?」 「え、あ。ぁあ、うん」 「若菜? 若菜……大丈夫だから。大丈夫。俺が一緒だから、な? ほら、もう帰ろう」  私の上の空な返事をどう捉えたのか、あーちゃんは私の手を握り、 「本鈴、鳴りましたよ。今日はありがとうございました。俺らは失礼します」 二人に挨拶して、階段を軽快に下り始めてしまった。  何とか二人には謝罪と謝礼を告げて、私も、落ちるように階段を下りていった。  
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