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学校を出る前に職員室か保健室へと言う私の言葉など聞き入れず、
「五十嵐さんが何とかしてくれる」
と言い切って、まっしぐらに校門を目指すあーちゃんの真剣さは、むしろあーちゃんこそ取り憑かれているのではと感じる程だった。
それが私の為であることは、勿論承知している。
あーちゃんと共に過ごしたのは私が最もオバケに振り回されていた時期であり、あーちゃんもまたそれに逐一付き合ってくれていた。
「若菜、ここは大丈夫か?」
無事校門に辿り着いて、漸く落ち着いて立ち止まり、あーちゃんが私へと振り返った。
憂い気に揺れる瞳が眩しい。
「ん、大丈夫」
私の返事に破顔して、あーちゃんはこれまでよりゆっくりと歩き始める。
わたしも歩調を合わせ、あーちゃんの後ろでなく横に並んだ。
こういうやり取りも、小学生だった当時と同じだ。
あーちゃんには、私が見ているオバケが一切見えていない。……と、思う。
だからつまり、私がオバケに何をされているのか、あーちゃんには認識できない。……筈だ。
いまいち断言しきれないのは、あまり自信がないから。
あーちゃんの対応には、見えていないからこその独特のまどろっこしさが確かにある。しかし『確認不能なオバケ』への揺らがない確信に満ちたあーちゃんの言動に、私の方が揺らいでしまう。
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