2. 幼馴染みは出会い頭からオカシイ

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 雰囲気を払拭するように、頭に視線をむけた。 「ウィッグも?」 「そう。買ってきてもらって、付け方も教えてもらった」 「お兄ちゃん、東京じゃないの?」  お兄ちゃんはあーちゃんより3つ年上で、高校卒業後上京している筈だ。 「ん? 東京だよ。でも大体毎週帰ってくるもん」 「そりゃ御苦労だねぇ」  昔からあーちゃんはお兄ちゃんに心酔し切っており、それ以上にお兄ちゃんの方もあーちゃん大好きという、両思い兄弟だった。  今更驚かないというより、むしろ納得だ。 「そんな無茶するなら、こっちで進学すれば良かったのに」 「兄ちゃんがこんな地方に収まる人間かよ」  嬉しそうに応えるあーちゃんに、そーだね、確かにね、と心の底からの賛同を表明する私。  向こうでも、オンナ千人切りとかしてるんだろうなぁ、お兄ちゃん……つい遠い目をしてしまう。 「……何だよ」  私が、あーちゃんとは違う方向に思考をし始めたことに気がついたらしく、訝しげに覗き込まれてしまった。 「いや……お兄ちゃん、平日なのにまだこっちにいるの?」 「ううん。今日は全部自分で仕上げたんだ。すげくない?」  ドヤ顔のあーちゃん。 「すげーっす」  お兄ちゃんに無理矢理仕立てあげられたわけでなく、自らの意思で装ってきたのか……と、その何らかの意気込みに脱帽だ。 「でも、何で?」 「ん? 一緒に帰ろうと思って」  ニコニコと言い切るあーちゃん。
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