57人が本棚に入れています
本棚に追加
雰囲気を払拭するように、頭に視線をむけた。
「ウィッグも?」
「そう。買ってきてもらって、付け方も教えてもらった」
「お兄ちゃん、東京じゃないの?」
お兄ちゃんはあーちゃんより3つ年上で、高校卒業後上京している筈だ。
「ん? 東京だよ。でも大体毎週帰ってくるもん」
「そりゃ御苦労だねぇ」
昔からあーちゃんはお兄ちゃんに心酔し切っており、それ以上にお兄ちゃんの方もあーちゃん大好きという、両思い兄弟だった。
今更驚かないというより、むしろ納得だ。
「そんな無茶するなら、こっちで進学すれば良かったのに」
「兄ちゃんがこんな地方に収まる人間かよ」
嬉しそうに応えるあーちゃんに、そーだね、確かにね、と心の底からの賛同を表明する私。
向こうでも、オンナ千人切りとかしてるんだろうなぁ、お兄ちゃん……つい遠い目をしてしまう。
「……何だよ」
私が、あーちゃんとは違う方向に思考をし始めたことに気がついたらしく、訝しげに覗き込まれてしまった。
「いや……お兄ちゃん、平日なのにまだこっちにいるの?」
「ううん。今日は全部自分で仕上げたんだ。すげくない?」
ドヤ顔のあーちゃん。
「すげーっす」
お兄ちゃんに無理矢理仕立てあげられたわけでなく、自らの意思で装ってきたのか……と、その何らかの意気込みに脱帽だ。
「でも、何で?」
「ん? 一緒に帰ろうと思って」
ニコニコと言い切るあーちゃん。
最初のコメントを投稿しよう!