2. 幼馴染みは出会い頭からオカシイ

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 そのオバケは、あーちゃんの体に隠れる弱々しい態度の小さな姿ながら、悪意のみを放つ強靭な眼光を真っ直ぐ私に向けていた。  私は、あーちゃんを、見捨ててしまった。  生じた軋轢は解消せず、そのまま、あーちゃんはお兄ちゃんと同じ私立の男子校へ、私は橘女学園へ進学。  中学三年間は、家が近いにも関わらずすれ違ったことさえなかった。  私たちの関係が再び親密になったのはここ2ヶ月のことだ。 「若菜っ!」  歩調はやはり速いまま、あーちゃんと繋がる左手が、グッと絞まる。 「俺は、昔のままの俺じゃない。若菜、俺が守るから。じいちゃんだけじゃなくて、誰であっても、何がいても」  あーちゃんの意気込みに胸が締め付けられる。  頑張るべきは他の誰でもない、私だ。 「……ん。ありがと。あーちゃん、今日も助けてくれたね。ありがとね」 「……へへっ」  はにかむあーちゃんの可愛らしさがくすぐったくて、同時に申し訳なくて。  笑う振りをして軽くまぶたを閉じる。 「そーそー。若菜、さっきはどうしたんだ?」 「……わかんない。私が入ろうとしたらドアが開かなかった」 「何かいたよな?」 「……あー、ぅん」 「ん?」 「……あ。ううん」 「どした?」 「顔馴染みのオバケでさ。いつも屋上にいるんだけど、今日は、いつもと様子が違ったの」 「嫌な兆候だな。どう違ったんだ?」  どう、って…… 。
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