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「ん。若菜、めっちゃ頑張ってる。落ち着いてて偉かったな」
褒められることなどそうそうない私なので、こういう時の返し方がいまいち判らない。
ありがとうの気持ちを込めて、エヘヘと笑みを浮かべて見せた。
「俺一人、焦っちゃってたもんなー。ハズカシー」
「そんなことないよっ! 屋上から出られたのも、何事もなくここにいられるのも、全部あーちゃんのお陰だよ!」
一生懸命言葉を尽くしながら、あーちゃんを喜ばせる何かがないか、必死に探る。
私の嬉しさが伝わる、もっと気の利いた一言が浮かんだらと思わずにいられない。
「あっ、それにねっ。梨花さんからもらったガーネットもちゃんと持ってるんだ」
『気の利いた一言』脳内検索中に引っ掛かったワードについて、つい熱を込めて前のめりに話し出してしまう。
胸ポケットに手を突っ込んで、赤い石のついたネックレスを入れた小袋を探りながら、そこでようやく、この話題があーちゃんには関係ないことに気が付いた。
大きなしくじり感が後悔の暗雲を呼び寄せ、途端に気持ちが逆方向に焦る。
梨花さんは、あーちゃんの母親だ。
私たちの幼馴染みな関係は、元々母親同士が仲良しだったことから始まっており、私は、まだ舌っ足らずだった頃から彼女を『梨花さん』と呼んでいた。
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