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そう思いながら、私は、まじまじと笹木さんを見る。彼女を正面から捉えるのは久し振りだった。
彼女は、付属幼稚園からこの学園に通っている。
学業優秀、頭脳明晰、容姿端麗、運動万能等々、彼女を讃える言葉は語り尽くせない。
社交的で感じが良く、しかし、八方美人の形容にまとわり付くコウモリ的な調子良さはない。芯が強く信頼に足る、カリスマ性に富んだリーダー気質だ。
ただ、私とは、果てしなく肌が合わなかった。
彼女の『明朗活発』な性質が、私の求める密やかな隅っこ生活とどうにも相反してしまっていたのだ。
ズバリ言われたことは一度たりともないけれど、『私のノリに合わせられないなんてどんなコミュ症?!』とでも言われている気がして、私は勝手ながら常に困惑していた。
それが中等部で三年間。
高校でようやく彼女と違うクラスになり、その掲示を見た時は心からホッとした私だった。
その彼女と二人きりなんて、気持ちがじわじわと降下してしまう。
「あー……そろそろ始まる? 朝の会」
何とか声を絞り出す。”だから私教室に戻るわ”と言いたい為の、前振りのつもりだった。
でも、笹木さんはそれを許してはくれない。
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